収蔵品概要
本館では収蔵品を,美術工芸学校以来の卒業作品と,画学校時代から収集された参考品に分けて管理しています。一世紀にわたる教育活動を背景に収集された資料は,多数の粉本や写生を含み、総数は4,000件を越えます。
Ⅰ 卒業作品の収集
Ⅰ 卒業作品の収集
村上華岳「二月乃頃」 岡本神草「口紅」
土田麦僊「髪」 三崎雍府「化粧棚図案」
 卒業作品では,明治27年の京都市美術学校工芸図案科作品が最も古く,現在もなお受け入れを継続しています。一時期全卒業生の作品を遺したこともありましたが,基本的には選択して購入されています。
 学校が,地元産業界からの要請をうけたカリキュラムを持っていたことを受けて,当初から日本画科と図案科の作品が収集されました。中でも土田麦僊や小野竹喬など京都の近代美術に大きな足跡を遺した作家たちの作品には,歴史的な価値を見いだすことができます。
 戦後は新制大学となり,教育内容の変化に伴って新しい分野の作品が増え,バラエテイーを生んでいます。
戦前期-京都市立美術工芸学校・同絵画専門学校の卒業作品ですが,絵画科(日本画)と図案科のみ遺されています。
戦後期-京都市立美術専門学校・同美術大学・同芸術大学の卒業・修了作品で,カリキュラムの多様化に伴い,戦前から継続する日本画・デザインのほか,洋画・彫刻・版画・造形構想・陶磁器・染織・漆工の各分野が増加しました。
Ⅱ 参考品の収集
Ⅰ 卒業作品の収集
初期大津絵「藤娘」 尾形乾山
「色絵槍梅文水指」
古清水
「色絵七宝透文手焙」
「高士談棋草花密陀絵重箱」
 卒業作品以外の資料を参考品と呼んでいます。その収集は,明治20年田能村直入の寄贈にはじまります。明治後期から大正期にかけて,教育の現場で活用する参考資料として収集は増加し,内容も絵画・陶磁器・染織・漆工・民俗資料など幅広い分野にわたりました。
 戦後は大学に陳列館が建設されたこともあって,教員の作品が収集されるようになり,以後,在京作家の作品を中心に,美術館としての性格を強く打ち出したコレクションが,形成されるようになりました。
美術工芸学校購入品-明治27年から数年間,国費による補助金を受け,尾形乾山や古清水などを含む陶磁器や漆器・絵画などの美術工芸品が多数購入されました。
教員等寄贈作品-北村西望,池田遥邨,山口華楊,上村松篁,秋野不矩,黒田重太郎,須田国太郎,稲垣稔次郎,富本憲吉,藤本能道,近藤悠三ら旧教員や卒業生の作品群です。
Ⅲ 教育活動と資料
Ⅰ 卒業作品の収集
幸野楳嶺
運筆手本「椿」
竹内栖鳳
「竹内栖鳳絵手本画巻」
石崎光瑤絵画資料
「蒼鷹・稚児隼」
入江波光摸
「水天像」
参考品は,学校という環境の中で収集されました。そのため,粉本や模本・下絵など,絵画教育に関連する資料も多く,近年はこうした歴史をふまえ,近現代作家の写生や下絵を積極的に収集しています。
画学校粉本・絵手本-画学校や美術工芸学校で使用された手本画・粉本類で,幸野楳嶺・竹内栖鳳らが制作した絵手本のほか,近世諸流派のものも含んでいます。
絵画模本-多数の現状模写を含む絵画模本群です。明治後期から昭和初期にかけて田中親美や入江波光らによって制作された作品のほか,近世の貴重な写本も含んでいます。
近現代作家絵画資料-鈴木百年・千種掃雲・今尾景年・石崎光瑤・奥村厚一・伊藤柏台・三輪晁勢・林司馬・猪原大華・足立源一郎・今井憲一・小合友之助・川端弥之助らの写生や下絵類です。
Ⅳ コレクションさまざま
Ⅰ 卒業作品の収集
周荃「秋渓漁隠図」 土佐派絵画資料:
土佐光茂「足利義晴像」
田村宗立旧蔵粉本:
「五部心観」
ニューギニア民族資料
神像(マサライ)
参考品の中には,多数が集合することで,より明確な特色を表わす資料群があります。これらは特殊コレクションとして一括資料の取り扱いをしています。
田能村直入旧蔵資料-画学校の設立を陳情し,開校後初代摂理(校長)となった田能村直入が寄贈した文房具と中国絵画で,幕末明治期の文人趣味をうかがわせます。
土佐派絵画資料-中世から近代初頭まで継続した大和絵の流派として知られる土佐派に伝えられた粉本と文書類です。中世の年紀を持つ資料を含んでいます。
田村宗立旧蔵粉本-幕末期に六角堂能満院にあった画僧大願の仏画道場で使用された仏画粉本です。仏画のみならず,垂迹画や肖像画を多数含みます。
ニューギニア民族資料-昭和44年に行われたニューギニア未開美術調査隊の収集品で,現在では収集困難な,セピック川中流域の神像や仮面,土器のコレクションです。


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