ごあいさつ

 

 

 芸術資料館の収蔵品は、140年を越える本学の歴史の中で、様々な機会を得て集められてきました。それは本学の歴史の語り部となっています。
 本展では収蔵品のなかから、人の姿を描いた絵画を模本と粉本によって紹介します。
 古く人の姿を描くことには特別な意味がありました。絵姿に呪術的要素があると考えられていたのです。そのため描かれるのは尊崇の対象に限られました。聖別された僧侶や神格化された人物が影像として描かれたのは、彼等が人を超えた存在とされたからです。それが中世になると人そのものが関心の対象となりはじめ、肖似性を重視する似絵とよばれる肖像画が制作されるようになりました。背景には舶載された宋代絵画によってもたらされた写実的な表現への関心の高まりがありました。
 展示している資料の多くは、近代の画家によって緻密に描かれた模本で、原本の魅力を余すところなく表現しています。人の姿を描く像の世界と、聖別された神の姿を描く影の世界によって形作られた、日本の肖像画の世界をごゆっくりお楽しみください。



2022年9月 主催者


Copyright (c) University Art Museum of Kyoto City University of Arts 2015.All Right Reserved