ごあいさつ

 

 

 芸術資料館の収蔵品は,140年を越える本学の歴史の中で,様々な機会を得て集められてきました。それは本学にとっての語り部ともいえます。
本展は収蔵品のなかから,絵巻と襖絵を対象とした模本を紹介します。
 日本でめざましい発展を遂げた絵画形式に絵巻があります。平安時代以後さまざまな出来事や物語が絵画化されました。また,中世になると室内を区切る調度として襖の需要が高まり,この襖を説話の一場面によって装飾することも増加しました。日本の絵画の中にはこうした物語る絵画がたくさん存在しています。世俗的な画題はもとより,宗教性を反映した画題にも展開して,日本の文学や思想を熟成させる基盤のひとつとなっていました。
 一方,京都市立美術工芸学校の時代から,絵画教育のためにこうした絵巻や襖絵を参考資料として収集するようになりました。古写本の購入のほか,明治30年代以後は,学校の卒業生が模本制作を依頼されることも増し,現在では多くの写本を所蔵しています。これらの写本は,制作時の考えかたによって粗密や形式の違いがあり,必ずしも原本の複製に見えないことがありますが,そこには作者が写本に求めたものを理解する楽しみも隠れています。
 語る絵画として収集されたこれらの写本を通して,描かれた説話や物語の世界をごゆっくりお楽しみください。


2022年5月 主催者


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