ごあいさつ

 

 芸術資料館の収蔵品は,135年を超す本学の歴史の中で,様々な機会を得て集められてきました。それはこの学校にとって歴史の語り部ともいえます。
 本展は,京都市が推進する「明治150年・京都の奇跡プロジェクト」の一環として行う収蔵品の展示です。明治13年京都御苑内に産声をあげた京都府画学校とその後身として多くの生徒を送り出した京都市立美術工芸学校で用いられた絵手本の一部を紹介します。
 京都府画学校は,日本絵画の学校として幅広い様式を教授の対象としました。生徒が伝統的絵画を学ぶために用いたのが絵手本です。これら手本画は,学校の教員自らが制作し,教員たちが師から受け継いだ四条派や円山派の伝統を継承するものでした。近世では粉本とよばれていた手本画を,新しい時代に適合するように工夫したものといえます。はじめは筆の運び方を重視していましたが,時代の移り変わりとともに,写生に基づいた実感を表現するものに変化して行きます。明治大正期の京都画壇の中核にいた教員たちが,どのような内容を生徒に伝えようとしたのか,毛筆の技術を通して読み取ることが可能です。
 絵手本は決して声高に主張する絵画ではありません。しかし,簡潔な表現の中に伝統的絵画のエッセンスがつまっています。多彩な画題をお楽しみください。

2018年9月 主催者


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