ごあいさつ

 

 芸術資料館の収蔵品は,135年を超す本学の歴史の中で,様々な機会を得て集められてきました。それはこの学校にとって歴史の語り部ともいえます。
 当館は,平成29年度に山口華楊の本画2点,大下絵5点,素描2点を新たに収蔵しました。本展では,それらを学内初お披露目します。
 山口華楊は,明治32年(1899)に京都の友禅彩色職人の家に生まれました。小学校を卒業後,西村五雲の画塾に入りましたが,師のすすめで大正5年(1916)に本学の前身である京都市立絵画専門学校に入学。同年には,第10回文展に《日午》を出品し,17歳で初入選しました。卒業後は,一時竹内栖鳳の竹杖会の研究会で研鑽を積み,昭和2年(1927)第8回,翌年9回帝展で《鹿》と《猿》がそれぞれ特選となりました。大正15年(1926)からは絵画専門学校の教員として後進の指導にあたり,昭和13年(1938)には急逝した師五雲の画塾・晨鳥社を研究団体として再結成しました。
 戦後の華楊は伝統的な日本画の行く末や自身の制作について悩みを抱えていましたが,貴船川や苔庭などで自然に没入し写生に集中した作品を発表すると,徐々に制作意欲を取り戻していきました。《白い馬》(昭和27年〈1952〉)や《黒豹》(昭和29年〈1954〉),《生》(昭和48年〈1973〉)などの代表作を発表し,昭和56年(1981)に文化勲章を受章,翌年には京都市名誉市民となりました。
 本展では,新収蔵品に加えて華楊が当館に寄付した《樹》(昭和38年〈1963〉)や,華楊の周辺作家の作品などを展示します。動物や植物に対する温かい眼差しと鋭い感性をもって描かれた華楊の作品世界をお楽しみください。

2018年6月 主催者


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