ごあいさつ

 

 

 芸術資料館の収蔵品は,140年を越える本学の教育の歴史の中で,様々な機会を得て集められてきました。これらは,本学の語り部とも言える存在です。
 「素描」という言葉は,美術に関心がある方であれば一度は耳にしたことがあるでしょう。モチーフの形態や構図を把握するために,木炭や鉛筆,筆などで簡単に描くことをいいます。フランス語の「dessin」や英語の「drawing」とほぼ同じ意味で使われます。作品制作の予備的,準備的な段階で描かれるものですが,素描特有の芸術的価値が見出され,素描自体を目的とする作品も発表されるようになりました。このことから,素描を「線的な方法で表現する芸術,およびその作品」(※1)ととらえることもできます。
 当館収蔵品の“素描”の分類は,本来の意味での素描だけでなく,写生(スケッチ)や下絵,日本絵画の粉本,ニューギニア民族資料の樹皮絵画なども含んでいます。本画(タブロー)以外の線的な方法で表現された絵画資料全般を“素描”として管理しています。本展では『和英対照日本美術用語辞典』(※2)などを参考に当館の“素描”を整理し紹介します。
 本学美術学部の新入生の皆さんは,入学に向けてたくさんの素描をしてきたことと思います。当館の収蔵品展が,皆さんの制作や学びの助けになることを願っています。

※1 “素描”.日本大百科全書.ジャパンナレッジ(オンラインデータベース),入手先〈ジャパンナレッジ,
https://japanknowledge.com/lib/display/?lid=1001000140990〉(参照2021-03-29)
※2 和英対照日本美術用語辞典編集委員会編『和英対照日本美術用語辞典』東京美術,1990年


2021年4月 主催者


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