ごあいさつ

 

 

 芸術資料館の収蔵品は,140年におよぶ本学の教育の歴史の中で,様々な機会を得て集められてきました。それはこの学校の語り部となっています。
 昨年,本会場で日本画における模写を主題とする展覧会を開催しました。古くから優れた絵画を写し伝え,その本質を学び取るために行われてきた模写の意義を作品によって問いかける展示でした。この模写とともに日本画教育の基盤とされているのが写生です。模写と写生,これが絵画を学ぶ者にとって車の両輪となりました。
 特に京都では近世に円山応挙が活躍し,その写生を重視する作風は多くの画家の学ぶところとなり,現代に至るまで潮流をなしています。明治13年に生まれた京都府画学校の教育もまた,この写生派の流れを受けるものであり,運筆とともに写生が重視されました。それも,明治末期になると,個性の表出を芸術の要所とする思潮が生まれ,画家たちは写生と表現の関係を模索するようになります。これは,現在もなお続く課題となっています。
 写生を主題とした本展では,大正から昭和初期の日本画卒業作品を中心に展示します。絵絹から和紙へと基底材が変化する時代を背景に,学生が正面から写生と向き合い,こころの表現としてかたちを模索する姿をご覧いただきたいと思います。皆様どうぞごゆっくりご観覧ください。


2020年10月 主催者


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