ごあいさつ

 

 本展では,土佐派絵画資料に含まれる武将や茶人の肖像,《伝源頼朝像》や《一休和尚像》の模本,ニューギニア民族資料の仮面,江馬努・吉川観方監修の風俗人形などを展示します。それぞれ成り立ちや性質が異なる多様な作品・資料を一堂にならべ,面貌や姿かたちの表現について着目し,その特性や共通点などを探ります。
 土佐派の肖像下絵は,対看写生によって像主の特徴をよく描き出していることが分かる一方で,紙形と呼ばれた面貌部分を他者の体躯に貼り付けるなどの流用も行われ,制作の裏側を垣間見ることができます。肖像画の模本は,ただ造形を写し取るだけでなく,作者の制作態度や意図をくみ取ることで原本に迫る描写を実現させています。応挙作品の模写である《人物正写惣本補図》は,人間を類型的に把握することで美の典型を探ろうとし,整理された線で人物を描写しています。ニューギニア民族資料の仮面は,儀礼の際に扮する精霊を表現していますが,豊富な造形力や多様な精霊の存在には目を見張るものがあります。這子や天児は,日本の祓いの信仰の中で幼子の身代わりとして用いられました。素朴でシンプルな造形が,時代を超えて人々の心に寄り添い続けたことを物語ります。江馬努・吉川観方監修の風俗人形は,風俗史研究の成果が活かされ,観方の下絵をもとに博多人形師らの技術によって制作されました。絵画の世界から抜け出してきたかのような造形の魅力があります。
 本展が,観覧された皆様の新たな発見のお手伝いとなることを願っています。どうぞごゆっくりご観覧ください。

2017年5月 主催者


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