ごあいさつ

 

 本展は,明治から大正の美人画に描かれた粧いと風俗にスポットを当てています。近代における美人画の誕生は,明治中頃とされています。そもそも当世の美人を描いた絵画は,個人で鑑賞される「私」の絵画でしたが,明治40年の政府主催の文部省美術展覧会(文展)開設によって「公」の場に登場し,絵画の一ジャンルとして成立しました。美人画は,時代の好みを反映し,理想化された当世美人を描くことを基本とする一方で,容貌の美しさだけでなく内面の美しさも求められるようになりました。
 本学の前身にあたる京都市立絵画専門学校においても,美人画が卒業作品として制作され現在当館に収蔵されています。本展では,その中から11点を展示し,華麗な模様の着物や櫛,簪などの装飾品が細やかに描かれた作品,色香のあるしぐさや妖艶な表情が目を引く作品などご紹介します。また,19世紀につくられた笄や簪,櫛と歯黒道具などもあわせて展示することで,美人の粧いを追体験いただければ幸いです。
 本展が,観覧された皆様の新たな発見のお手伝いとなることを願っています。どうぞごゆっくりご観覧ください。

2016年10月 主催者


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