ごあいさつ

 

 本展では,幕末・明治に活躍した望月玉泉(1834-1913)が描いた「平安百景」の粉本(ふんぽん)を展示します。明治20年(1887)9月4日,玉泉は知恩院において「平安百景会」を設立し,京都の名勝百景を選んで百図を制作しました。その百図には,「平安」と題されているものの洛中洛外にとどまらず,広く山城国の名勝が選ばれています。また,都の歴史を感じさせる社寺や庭園だけでなく,明治以降に建造された橋や街灯などが見られる風景まで含まれており,歴史を踏まえながらも新しい時代を象徴する百図となっています。この会の会員は50名で,1名につき双幅が頒たれましたが,現在所在が確認されている作品はあまり多くはなく,その全貌は明らかになってはいません。
 今回展示する粉本は,望月派の画塾・資清館に所蔵されていました。「平安百景」が望月派の教育に活用されていたことが想像される一方で,「平安百景」そのものがどのような作品群であったのかをうかがい知る貴重な資料といえます。
 知られざる「平安百景」の粉本が、展覧会を観覧された皆さんの新たな発見のお手伝いとなることを願っています。皆様どうぞごゆっくりご観覧ください。

2016年9月 主催者


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