ごあいさつ

 本展は、芸術資料館収蔵品の中から移りゆく四季の景を描き出した作品にスポットをあて紹介します。日本には古くから、花鳥風月とも称される美しい自然をめで、詩歌や絵画をたしなむ文化があります。日常においても、季節にあった花を生け絵を飾り、旬の食材を料理するなど、四季折々の変化を取り入れ生活を豊かにしてきました。

 本学で学び、あるいは本学で後進の指導にあたった画家たちも、各々の技術、技法、表現を駆使して花鳥風月を作品にしました。厳しい寒さの中でも白梅が咲き、鳥がさえずる早春の日を清廉に表現した榊原苔山の《早春》や、春の訪れを祝福するかのような桃色の枝垂れ桜が目を引く黒田重太郎の《平安春色》、雨上がりの虹が架かる空を背景に深緑の木々の上で凜とたたずむブッポウソウを描いた三輪晁勢の《仏法僧》、実りの秋を迎えた野原で遊ぶ二匹の若いキツネが愛らしい曲子光男の《深秋》など、日本の豊かな四季を丁寧に描出しています。

 日本の伝統的な画題として、四季の花鳥を一つの絵の中に表現するというものがあります。それはいずれの季節においても飾ることが可能であるというだけでなく、現実には起こり得ないすべての季節を超越した理想郷、浄土としての意味も併せ持っています。本展の本学ゆかりの画家たちによる花鳥風月の共演を通して、ここでしか味わうことができない理想郷をごゆっくりとご覧ください。

2016年5月 主催者


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